TECHNICAL NOTICE I’D L D0020200C (180319)
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JP
本書では、製品の正しい使用方法を説明しています。技術や使用方法
については、いくつかの例のみを掲載しています。
製品の使用に関連する危険については、警告のマークが付いていま
す。ただし、製品の使用に関連する危険の全てをここに網羅することは
できません。最新の情報や、その他の補足情報等は Petzl.com で参照
できますので、定期的に確認してください。
警告および注意事項に留意し、製品を正しく使用する事は、ユーザーの
責任です。本製品の誤った使用は危険を増加させます。疑問点や不明
な点は (株) アルテリア (TEL 04-2968-3733) にご相談ください。
1.用途
本製品は墜落からの保護を目的として使用する個人保護用具 (PPE)
です。
本製品は個人保護用具に関する規則 (EU) 2016/425 に適合していま
す。EU 適合宣言書は Petzl.com で確認できます。
セルフブレーキ下降器 / ビレイ器具です。
本製品の限界を超えるような使用をしないでください。また、本来の用
途以外での使用はしないでください。
責任
警告
この製品を使用する活動には危険が伴います。
ユーザー各自が自身の行為、判断、および安全の確保についてそ
の責 任を負うこととします。
使用する前に必ず:
- 取扱説明書をよく読み、理解してください
- この製品を正しく使用するための適切な指導を受けてください
- この製品の機能とその限界について理解してください
- この製品を使用する活動に伴う危険について理解してください
これらの注意事項を無視または軽視すると、重度の傷害や死につ
ながる場合があります。
この製品は使用方法を熟知していて責任能力のある人、あるいはそ
れらの人から目の届く範囲で直接指導を受けられる人のみ使用して
ください。
ユーザー各自が自身の行為、判断、および安全の確保について責任を
負い、またそれによって生じる結果についても責任を負うこととします。
各自で責任がとれない場合や、その立場にない場合、また取扱説明書
の内容を理解できない場合は、この製品を使用しないでください。
2.各部の名称
(1) 可動サイドプレート、(2) ゲート、(3) 軸、(4) カム、(5) ブレーキプレ
ート、(6) ハンドル、(7) アタッチメントホール、(8) ゲートロック用ホー
ル、(9) ゲートロック用スクリュー、(10) 誤操作防止用キャッチ、(11) 補助
ブレーキ用ホール、(12) 末端側のロープ
ハ ンド ル ポ ジ ション :
a.停止位置 (ロープがロックされ、ハンドルはひっかからない状態に
収まります )
b.下降 (ハンドルで徐々にロックを緩めます)
c.収納 (持ち運ぶ際にハンドルを収納します)
主な素材:
アルミニウム合金、ステンレススチール
3.点検のポイント
器具の状態は、ユーザーの安全に大きく関係します。
ペツルは、十分な知識を持つ適任者による詳細点検を、少なくとも 12
ヶ月ごとに行うことをお勧めします (国や地域における法規や、使用
状態によっても変わります)。Petzl.com で説明されている方法に従っ
て点検してください。点検の結果を記録してください。点検記録に含
める内容: 種類、モデル、製造者の連絡先、個別番号、製造日、購入日、
初回使用時の日付、次回点検予定日、問題点、コメント、点検者の名前
および署名。
毎回、使用前に
製品に亀裂や変形、傷、磨耗、腐食がないことを確認してください (サイ
ドプレート、軸、リベット、カム、ブレーキプレート、アタッチメントホー
ル、誤操作防止用キャッチ)。ゲートの状態に問題がなく、正しく機能す
ることを確認してください (スプリングの動き、ゲートが完全に閉まるこ
と)。ハンドルの状態に問題がなく、正しく機能することを確認してくだ
さい (カムおよびスプリングの動き、パニック防止機能)。カムの動きに
問題がないことを確認してください。
使用中の注意点
この製品および併用する器具 (連結している場合は連結部を含む) に
常に注意を払い、状態を確認してください。全ての構成器具が正しくセ
ットされていることを確認してください。
警告: ロープの状態 (磨耗、汚れ、水分、雨、氷等) によってロックの効き
具合は変わります。
ブレーキの効き具合は、ロープの状態および使用状況 (直径、水分、雨、
氷、汚れ等) によって変わります。全てのロープにおいて、使用前にブレ
ーキの効き具合に慣れておく必要があります。
4.適合性
この製品がシステムの中のその他の器具と併用できることを確認して
ください (併用できる = 相互の機能を妨げない)。
I’D L と併用する用具は、使用する国における最新の規格に適合してい
なければなりません (例: ヨーロッパにおけるハーネスの規格 EN 1497
または EN 813)。
ゲートにより、コネクターに接続した状態で可動サイドプレートを開け
てロープをセットできます。コネクターを正しい位置に維持するため
に、I’D L にはポジショニングバー CAPTIV を併用できます。
5.機能の原理と確認
I’D L は、ロープが器具の中で一方向にはロックし、反対方向にはスラ
イドしま す。
ロープとの摩擦によってカムが回転し、ブレーキプレートとの間にロー
プを挟むことでロックします。
ロックは、ハンドルを操作することにより徐々に解除できます (末端側
のロープから絶対に手を放さないでください)。
警告: ハンドルの引き過ぎはコントロールを失う原因になります。
オートロックシステム
オートロックシステムにより、ハンドルが停止位置に戻り、器具が自動
的 に ロックします。
パニック防止機能
ユーザーがハンドルを強く引きすぎると、パニック防止機能が作動して
下降を自動的に停止します。下降を再開するには、ハンドルを停止位置
に戻してから再度引いてください。
6.I’D L のセット
ハーネスまたはアンカーへ連結するために、I’D L にロッキングカラビ
ナを取り付けます。
6a.ハーネスへの連結
可動サイドプレートを開き、ハンドルを少し上げ、カムが動く状態にし
ます。器具に描かれているアイコンの方向に従って、ロープをカムの周
りにセットします。可動サイドプレートを閉じ、ゲートが完全に閉まっ
ていることを確認してください。ロープをセットした時は毎回、荷重が
かかる方向に引いてロープがロックすることを確認してください。誤操
作防止用キャッチにより、逆さに取り付けられたロープを検出すること
ができます。
6b.アンカーへの連結
可動サイドプレートを開き、ハンドルを少し上げ、カムが動く状態にし
ます。器具に描かれているアイコンの方向に従って、ロープをカムの周
りにセットします。可動サイドプレートを閉じ、ゲートが完全に閉まって
いることを確認してください。ロープをセットした時は毎回、荷重がかか
る方向に引いてロープがロックすることを確認してください。ロープを、
アンカーにセットされ たディレクション用のカラビナに通して折り返す
か、補助ブレーキ (別売) に通します。警告: 誤操作防止用キャッチは、ロ
ープがアンカーにセットされたディレクション用のカラビナで折り返さ
れている時のみ作動します。
6c.ゲートのロック
ロープをセットした後に器具が開くのを防ぐ必要がある場合は (レスキ
ューキット等)、付属のスクリューでゲートをロックすることができます。
7 .ロ ープ アクセス
EN 12841:2006 タイプ C
ロープアクセスのための下降器です。
最大使用荷重: 150 kg (1人)。レスキューにおいては、200 kg (2人) ま
で使用できます。
CE EN 12841 タイプ C の認証試験で使用されたロープ:
- トイフェルベルガー製 KMIII 11.5 mm
- トイフェルベルガー製 KMIII 13 mm
墜落や振り子のリスクを軽減するため、I’D L とアンカーの間のロープ
ができる限り垂 直 に なり、たるまないようにしてください。
タイプ B および C の器具は、ロープアクセス用にデザインされており、
タイプ A 適合のバックアップシステム (例 ASAP) と併用しなければな
りません。ユーザーの全体重がバックアップ用ロープにかかっている時
は、バックアップ用ロープが作業用ロープとなるため、別のバックアッ
プ用ロープと併用しなければなりません。
8.レスキュー用下降器
EN 341:2011 class A
- 下降の最大エネルギー 7.5 MJ
エネルギー = ユーザーの体重 x 重力 x 下降距離 x 下降の回数
- 試験で使用されたロープ、最大使用荷重、最長下降距離: 図を参照し
てくだ さい
- 最小使用荷重: 30 kg
- 墜落時のリスクを軽減するため、I’D L とユーザーの間のロープがたる
まないようにしてください
- 次に点検されるまでの期間、I’D L を支点に設置しておく場合、周囲の
環境から保護してください
- EN 341 試験温度: 乾燥した状態で -40 ℃、濡れて冷えた状態で -4 ℃
- 下降が妨げられない方法で I’D L を支点に設置してください
- 下降速度をコントロールしてください: コントロールは一度失うと取り
戻すのが困難です
- 下降が長すぎたり速すぎたりすると、I’D L が過熱し、ロープが損傷す
る場合があります
- I’D L を EN 341 に適合した下降器として使用する場合、用途はレスキ
ューに限定されます
- 試験で使用されたロープの性能:
ナイロンおよびポリエステル製のロープ。
1.外皮のずれ (%)
2.伸び率 (%)
3.外皮率 (%)
4.芯の占める率 (%)
5.重量 (g/m)
6.収縮率 (%)
ANSI / ASSE Z359.4 - 2013
最長下降距離: 200 m
I’D L は、器具の過熱を避ければ複数回の下降を続けて行うことが可
能で す。
ANSI Z359.1、Z359.4 および全ての該当する規則を参照してください。
エネルギー = ユーザーの体重 x 重力 x 下降距離 x 下降の回数
作業またはレスキューに使用するアンカーは 3100 ポンド (13.8 kN)
以上の強度を持つか、少なくともシステムにかかる荷重の5倍の強度
が必要です。フォールアレスト用にアンカーを使用する場合はそれ以
上の強度を持ち、ANSI Z359.1 規格の要求事項に適合している必要が
ありま す。
支点の強度を減少させず、また使用中にシステムが偶発的に動かない
方法で器具を支点に連結する必要があります。実際に全荷重をかける
前に、テンションをかけて確認してください。
9.ハーネスに連結しての使用
9a.下降
末端側のロープを握ったまま、ゆっくりとハンドルを引いてロープを流
してください。
9b.摩擦の追加
スピードのコントロールが困難な場合、ロープが新しい場合や滑りや
すい場合、大きな荷重や2人で使用する場合は、摩擦を増やして使用
してください。
摩擦を増やすには、I’D L のカラビナに別のカラビナをセットしてロー
プを折り返すか、補助ブレーキ (別売) に通します。
警告: 補助ブレーキ (オープン) 使用の際には、ロープを常に補助ブレ
ーキ内に維持するようにしてください。ロープが補助ブレーキから外れ
てしまうおそれのあるロープのねじれやループに注意してください。
9c.停止位置
ロープから手を離す前に、ハンドルが停止位置に正しく戻っていること
を確認してください。
構造物や器具に接触しないように注意してください。ハンドルが停止
位置に戻るのが妨げられるおそれがあります。ハンドルが停止位置に
ない場合、ロープが偶発的にひっかかり、ロック解除の原因となるおそ
れ が ありま す。
9d.短い距離のロープ登高
ハンドルを操作せずに、I’D L を上方向にスライドすることができます。
10.アンカーに連結しての使用
末端側のロープは、必ずアンカーにセットされたディレクション用のカ
ラビナで折り返す、または補助ブレーキ (別売) に通してください。
警告: 補助ブレーキ (オープン) 使用の際には、ロープを常に補助ブレ
ーキ内に維持するようにしてください。ロープが補助ブレーキから外れ
てしまうおそれのあるロープのねじれやループに注意してください。
10a.ロワーダウン
末端側のロープを握ったまま、ゆっくりとハンドルを引いてロープを流
してください。
10b.ロープを繰り出す
末端側のロープを握ったまま、親指でカムを押さえてロープが流れ
る状態にしてください。もう片方の手でロープを引いて繰り出してく
ださい。
10c.停止位置
ロープから手を離す前に、ハンドルが停止位置に正しく戻っていること
を確認してください。
構造物や器具に接触しないように注意してください。ハンドルが停止
位置に戻るのが妨げられるおそれがあります。ハンドルが停止位置に
ない場合、ロープが偶発的にひっかかり、ロック解除の原因となるおそ
れ が ありま す。
11.使用の制限
本取扱説明書は、重要な使用条件について記載しています: 使用荷重、
距離、速度、併用可能なロープ等。
ロープの状態 (新しいロープはより滑りやすい) や使用温度 (高温下で
はブレーキの効きが悪くなる) 等、ここで網羅されていない要因が器具
の機能に影響を与える場合があります。
本下降器は、使用条件が平均的な場合において最適に機能しま
す。全ての使用条件が上限に近い場合、器具の機能は限界に達
します。
極端な使用条件下では、下降のコントロールが失われ、ロープが
損傷する危険性があります。
十分に注意を払い、特別な措置 (ブレーキの追加、速度の減少、中間支
点を使用して下降を分割する等) を積極的に取ってください。
低温下における使用の制限:
通常の状態で -40 ℃。
雨、波しぶき、結露等、特に濡れて冷えた状態で -4 ℃。これらの条件下
では、ロープおよび下降器の機能が低下するおそれがあります。
12.補足情報
- I’D L は、フォールアレストシステムでの使用には適していません
- 過度な動荷重がかかると、ロープが損傷する可能性があります
- この製品の使用中に問題が生じた際にすみやかに対処できるよう、
レスキュープランとそれに必要となる装備をあらかじめ用意しておく
必要があります
- システム用のアンカーは、ユーザーの体より上にとるようにしてくださ
い。アンカーは、最低でも 12 kN の強度を持ち、EN 795 の要求事項を
満たしていなければなりません
- フォールアレストシステムでは、墜落した際に地面や障害物に衝突す
ることがないよう、毎回使用前に十分なクリアランスがユーザーの下に
確保されていることを確認する必要があります
- 墜落距離を短くし、危険を少なくするため、アンカーが適切な位置に
設置されていることを確認してください
- フォールアレストシステムで身体のサポートに使用できるのは、フォー
ルアレストハーネスのみです
- 複数の器具を同時に使用する場合、1つの器具の安全性が、別の器
具の使用によって損なわれることがあります
- 警告、危険: 製品がざらざらした箇所や鋭利な角、稼動中の機械、電源
に接触しないように注意してください
- 電気や高温、化学薬品等による危険がある区域で使用する際は十分
に 注 意してくだ さ い
- ユーザーは、高所での活動が行える良好な健康状態にあることが必
要です。警告: ハーネスを着用して動きの取れない状態のまま吊り下げ
られると、重度の傷害や死に至る危険があります
- 併用する全ての用具の取扱説明書をよく読み、理解してください
- 取扱説明書は、製品と一緒にユーザーの手に届かなければなりませ
ん。また、取扱説明書は製品が使用される国の言語に訳されていなけ
ればなりません
- 製品に記されたマーキングが読めなくならないように注意してくだ
さい
廃棄基準:
警告: 極めて異例な状況においては、1回の使用で損傷が生じ、その後
使用不可能になる場合があります (劣悪な使用環境、海に近い環境で
の使用、鋭利な角との接触、極端な高 / 低温下での使用や保管、化学
薬品との接触等)。
以下のいずれかに該当する製品は以後使用しないでください:
- 大きな墜落を止めた、あるいは非常に大きな荷重がかかった
- 点検において使用不可と判断された。製品の状態に疑問がある
- 完全な使用履歴が分からない
- 該当する規格や法律の変更、新しい技術の発達、また他の器具との併
用に適さない等の理由で、使用には適さないと判断された
このような製品は、以後使用されることを避けるため廃棄してくださ
い。
アイコン :
A.耐用年数 (特に設けていません) - B.使用温度 - C.使用上の注意 - D.ク
リーニング - E.乾燥 - F.保管 / 持ち運び - G.メンテナンス - H.改造 / 修理
(パーツの交換を除き、ペツルの施設外での製品の改造および修理を
禁じます) - I.問い合わせ
アクセサリー
補助ブレーキ (オープン): 一時的に必要なブレーキの追加用
補助ブレーキ (クローズ): 常時必要なブレーキの追加用 (レスキュー
キ ット 等 )
3年保証
原材料および製造過程における全ての欠陥に対して適用されます。以
下の場合は保証の対象外とします: 通常の磨耗や傷、酸化、改造や改
変、不適切な保管方法、メンテナンスの不足、事故または過失による損
傷、不適切または誤った使用方法による故障。
警告のマーク
1.重傷または死につながるおそれがあります。2.事故や怪我につながる
危険性があります。3.製品の機能や性能に関する重要な情報です。4.し
てはいけない内容です。
トレ ーサビリティとマーキング
a.個人保護用具の規格の要求事項に適合。EU 型式検定を行った公認
認証機関 - b.この個人保護用具の製造を監査する公認機関の ID 番
号 - c.トレーサビリティ: データマトリクスコード - d.ロープの直径およ
び最大使用荷重 - e.個別番号 - f.製造年 - g.製造月 - h.ロット番号 - i.個
体識別番号 - j.規格 - k.取扱説明書をよく読んでください - l.モデル名 -
m.ロープの方向 - n.最長下降距離および使用気温 - o.ハンドルポジシ
ョン - p.NFPA および ANSI/ASSE 認証機関 - q.製造者住所